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解理症状と心的外傷後ストレス障害

ー小児期の虐待体験者および摂食障害患者をめぐってー
DISSOCIATIVE SYMPTOMATOLOGY AND POST TRAUMATIC STRESS IN EATING DISORDERED VICTIMS OF CHILD ABUSE

日本ストレス学会誌, (In Japanese) 7:2, 73; 1992.


東京大学医学部       バーガー・ダグラス

東京大学心療内科      久保木  冨房  末松 弘行

慶応義塾大学        大野   裕   白波瀬 丈一郎

東京都精神医学総合研究所  斉藤   学

三楽病院          中島  一憲

東京大学医学部       末松  弘行  


(学会報告の抜粋)


米国の研究では、多重人格障害もしくは摂食障害を呈する患者に小児期の身体的/性的虐待 が多く認められると指摘されている。その意味では、これらの症状群は小児期の外傷体験に由来する心的外傷後ストレス障害と考えられる部分が少なくない。しかし、米国でこうした報告が多く行われている反面、日本ではほとんど体系的な報告がなされていないのが実情である。例えば、高橋は山梨県の精神病院における過去10年間の患者を調査し、心因性とん走や心因性健忘症を呈する症例は存在していたものの、多重人格障害は一例も見られなかったと報告している。また、中島は19歳女性の多重人格障害患者についての症例報告を行っている。

しかし、日本における小児期の虐待実態は明らかにされているとは言えず、そうした体験と精神か的障害との関連も不明確なままである。こうした背景をふまえて現在我々は、小児期に虐待を受けた人たちから構成される2つの自助グループの協力をえて、こうした人たちに外傷体験がどのように影響しているかについて調査するとともに、摂食障害患者が小児期にどのような体験をし、それがその後心的にどのように影響したかということについて研究中である。

そこで今回我々は、米国での報告について心的外傷後ストレス障害の視点かあら概説し、我々の研究についても研究についても報告することにしたい。